高齢者疑似体験実習は,高齢者の身体的変化を体験することにより心理的共感を惹起し,高齢者への援助を体験的に学ぶことができるといわれているため,大阪歯科大学高齢者歯科学講座では,平成13年度より歯学基礎教育が終了後,病院臨床実習前のプレクリニックとして高齢者疑似体験実習を行ってきた。今回,実習後に提出させた自由回答文を分析し,歯学部学生に行った高齢者疑似体験実習の効果とその有用性について検討を行った。
分析データは,病院臨床実習前プレクリニックにおいて高齢者疑似体験実習を受講した大阪歯科大学歯学部4年生が,体験実習終了後に提出した253の自由回答文である。得られたデータをテキストマイニングソフトKH Coder 2.00eを用い,計量テキスト分析の一手法である接合アプローチにて分析を行った。
対象となる自由回答文を形態素解析した結果,総頻出語は37,522語で,異なる語は1,947語であった。クラスター分析ならびに対応分析により,3つのコーディングルールが作成できた。コーディングルールにて自由回答文を集計した結果,「身体的・心理的理解」のコードは全体の71.15%と多くの学生が理解を示した。それに比べ到達できた学生は少ないものの,44.66%の学生が「共感的理解」に到達し,さらに34.78%の学生が「自己認識変化」に到達した。このように高齢者疑似体験実習は,学生により到達内容に差はあるものの,歯学部学生が高齢者を理解するために有効であることが定量的に示された。