老年歯科医学
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臨床報告
オーラルジスキネジアに伴う難治性潰瘍に対するオーラルアプライアンス治療の1例
林 宰央恩田 健志松本 暢久藥師寺 孝柴原 孝彦
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2017 年 32 巻 1 号 p. 17-22

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抄録

 オーラルジスキネジア(oral dyskinesia:OD)は口腔顎顔面領域に出現する反復性,常同性に速くて短い不随意運動である。特発性OD,薬物性ODと錐体外路系疾患の部分症候に大別される。症例は82歳女性。既往歴は脳梗塞,高血圧症,慢性胃炎,骨粗鬆症,不眠症であった。現病歴は,2014年5月に右舌縁部に口内炎を自覚し,紹介医にてステロイド軟膏が処方されていた。同年11月に当科を紹介・受診した。右舌縁部に,周囲に軽度隆起を伴う境界明瞭な長径15 mm大の類円形の潰瘍を認め,硬結と出血傾向はなかった。舌の静止を指示したが静止せず絶えず舌を捻転していた。右側下顎第一大臼歯と舌潰瘍面の位置は一致していた。会話や食事時に舌の不随意運動は認めなかった。特発性ODに伴う右舌縁部褥瘡性潰瘍と診断した。舌の保護と口腔環境のディプログラミング効果の目的でオーラルアプライアンス(oral appliance:OA)を作製し,日中のみ使用し,夜間就寝時は外すように指導した。OAを使用し2カ月後,舌縁部の褥瘡性潰瘍は完治した。OAを使用し3カ月後,ODは軽快していた。OAの使用は4カ月で中止した。OAの使用中止から1年が経過するが,褥瘡性潰瘍の再発は認めない。毎月の定期検診は継続しているが,ODの残存は認めるものの,軽度となっている。

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© 2017 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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