老年歯科医学
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臨床報告
口腔出血を契機に診断された水疱性類天疱瘡の1例
大和 泰子小林 千恵
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2017 年 32 巻 3 号 p. 382-385

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抄録

 われわれは著しい口腔出血を認めた水疱性類天疱瘡の1例を経験したので報告する。症例は82歳男性,左大腿骨頸部骨折のため地域医療支援病院であるA病院に入院していた。看護師より口腔の出血が止まらないとの訴えがあり訪問歯科診療を行った。進行性核上皮性麻痺の既往があり,意思疎通が困難で胃瘻より栄養摂取を行っていた。初診時,口腔内は多量の血餅があり,上顎前歯部の歯肉より出血が持続し上下顎歯肉と口蓋に辺縁不整で広範囲なびらんや水疱を認めた。家族より入院前から口腔出血があったことを聴取した。以上のことから自己免疫性水疱症を疑い,主治医へ皮膚科対診を依頼するも実行されず,口腔衛生管理を行っていた。初診から2カ月経過し療養病床のあるB病院へ転院となり,家族の希望もあったため,われわれも歯科訪問診療を継続し口腔衛生状態は少しずつ改善してきた。しかし,歯肉出血,広範囲なびらんの状態は変わらず改善傾向になかったため,主治医へ血液検査を依頼し生検を施行した。皮膚科専門医にも訪問診療を依頼し,水疱性類天疱瘡と確定診断を得た。現在,局所外用療法を施行し適切な口腔機能維持のため積極的に口腔健康管理を行っている。また,出血や疼痛を伴う口腔粘膜疾患は摂食嚥下や呼吸に影響すると考えられる。口腔粘膜疾患を契機に低栄養に陥り全身状態の悪化を招きかねないため,迅速に適切な処置を行う必要がある。

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© 2017 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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