老年歯科医学
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原著
丹波圏域在住高齢者における転倒リスクと口腔機能との関連性
長谷川 陽子堀井 宣秀櫻本 亜弓杉田 英之小野 高裕澤田 隆永井 宏達新村 健岸本 裕充
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キーワード: 転倒, 高齢者, 咬合, 歯数, 身体機能
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2018 年 32 巻 4 号 p. 468-476

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抄録

 目的:本研究は,農村部在住の自立した高齢者を対象に,転倒リスクを高める口腔内要因について検討することを目的に解析を行った。

 方法:対象は,兵庫県篠山市とその周辺地域在住の自立した65歳以上の高齢者308名とした。口腔機能は,歯数,咬合支持,義歯の有無,咬合力を評価した。身体機能評価は,介護予防において運動器の機能向上マニュアルでのアウトカム指標として用いられている項目を基に,歩行速度テストによる最速歩行速度の測定,Time up to goテスト(以下,TUG),タンデムテスト,膝伸展筋力測定,開眼片脚立位テストを行った。また,体組成分析ならびに身体活動量を解析対象とした。

 結果:対象者の歯数と咬合支持および咬合力との間に有意な正相関を認め,義歯使用者は義歯未使用者と比較して身体機能が低値を示す傾向を認めた。歩行能力・動的バランス・敏捷性などの機能的移動能力を反映するTUGと歯数・咬合力との間には,他の項目と比較して強い相関を認めた。また,歯数と身体活動量においても有意な正相関を認め,歯数が多い対象者は,身体活動量が高い傾向を認めた。咬合支持と身体機能評価との関連性を検討した結果,EichnerのClass C群は身体機能が有意に低値を示しており,身体活動量も有意に低値を示した。

 結論:歯の喪失を防ぎ,咬合力を健全に保つことは,身体機能の維持に密接に関連し,転倒リスクを軽減している可能性も示唆された。

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© 2018 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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