2018 年 32 巻 4 号 p. 477-482
平成28年4月より,保険診療に新設された在宅患者歯科治療総合医療管理料(Ⅱ)(以下在歯管(Ⅱ))によって訪問歯科診療ごとのバイタルサイン測定が評価されるようになったが,その有用性,整合性を明らかにするため,訪問歯科診療時のバイタルサイン測定を実施,その結果を検討した。対象は,2016年6月から12月までの7カ月間に施設入所中の高齢患者とした。症例数は男性47例,女性134例の計181例で,平均年齢は83.4±9.3歳であった。全身疾患では循環器疾患が73.5%,次いで脳血管疾患56.4%,認知症を含む精神疾患53.6%と続いた。処置内容はブラッシングを主体とした口腔衛生管理が61.1%,義歯装着,修理,調整などの義歯関連が25.0%,充塡などの保存治療が6.7%であった。
処置前の血圧では57例(31.5%)で異常値を示し,そのうち在歯管(Ⅱ)の適応症例は54例(94.7%)であった。処置中の血圧では62例(34.4%)で異常値を認め,処置内容でみると62例中52例(83.9%)は在歯管(Ⅱ)の適応処置ではなかった。
以上より,在歯管(Ⅱ)の適応疾患は限定されているものの,異常値を示した症例の大部分を網羅していた。しかし,在歯管(Ⅱ)の適応処置には訪問歯科診療で多く行われる口腔衛生管理や義歯調整は含まれておらず,かつ今回の結果でもそれらの処置で異常値が多く出ていたことから,その拡大に向けた検討が必要と考えられた。