口腔衛生管理は口腔内への細菌の飛散を伴う。そのため要介護者において汚染物の回収は重要であるが,統一された手技はない。今回われわれは,口腔衛生管理の手技としてのスポンジブラシによるふき取り操作が,吸引器を併用した口腔清掃時に口腔衛生の改善に有効な手技となりうるか検討した。対象は介護療養病床に入院中の要介護高齢者62名とした。昼食後に歯科衛生士により口腔衛生管理が施行された。舌背の細菌は口腔衛生管理開始前,歯・粘膜の清掃後のスポンジブラシによるふき取り前,スポンジブラシによるふき取り後の3時点に採取し,細菌数は細菌カウンタ(パナソニックヘルスケア社製)で測定した。舌背の細菌数は,3時点で統計学的に有意差が認められた。スポンジブラシでのふき取り操作は,吸引器を併用した口腔清掃後に細菌数を有意に減少させた。口腔衛生管理開始前の細菌数は,患者背景が非経口摂取,残存歯数10以上で有意に多かった。口腔衛生管理開始前の細菌数が多いと,ふき取り操作は有意に細菌数を減少させた。口腔衛生管理開始前の細菌数が少ないと,細菌数は歯・粘膜の清掃後にいったん増加し,ふき取り操作によって口腔衛生管理前より減少した。これらの結果より,スポンジブラシでのふき取り操作は清掃時に吸引器を併用していても,口腔清掃で拡散された汚染物の回収に有効な手技となりうると考えられた。