島根県歯科医師会は,平成24年度から5年間,島根県からの委託事業「高齢者の低栄養予防対策事業」を行った。
平成24年度は,口腔機能が栄養に及ぼす影響についての文献調査を行った。過去20年間の和文文献中49件を文献調査対象として報告書にまとめた。また,MNA®-Short Formを使用した調査では,歯科診療所に通院する256名の高齢者のなかで約1/3の者が低栄養あるいは低栄養のおそれありであった。
平成25年度は,高齢者の口腔機能と栄養の関連性を調べるためMNA®-Full Versionを使用した。調査の結果,口腔機能の多くの評価項目と栄養との関連が示された。特に,たんぱく質の摂取と果物・野菜の摂取には,口腔機能の客観的評価項目が共通して関連していた。
これを受けて歯科医療と栄養が連携した取り組みが必要と考え,平成26年度から28年度にかけて,島根県栄養士会が運営する栄養ケア・ステーションを活用し,低栄養の疑いのある高齢者に対して管理栄養士と協働した栄養指導を行った。各年度末には事業報告を行うとともに講師を招聘し研修会を開催した。栄養士と連携した歯科治療,保健指導(栄養指導)は参加者に好評で,拡充した取り組みが必要であると思われた。また,島根県歯科医師会の関連事業(益田市日常生活圏域ニーズ調査解析事業,後期高齢者歯科口腔健診,8020公募研究事業)と連携しながら低栄養予防の普及啓発とオーラルフレイル対策への展開を図っている。
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