老年歯科医学
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調査報告
地域歯科診療所における自立高齢者の口腔機能低下症に関する実態調査
伊與田 清美水谷 慎介奥 菜央理柏﨑 晴彦
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2019 年 34 巻 3 号 p. 406-414

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抄録

 目的:地域歯科診療所通院中の自立高齢者に実施された口腔機能精密検査の結果に基づき,各年代における口腔機能低下症に関する実態を調査した。

 方法:地域歯科診療所(福岡県)通院中の65歳以上の自立高齢者134名に実施された口腔機能精密検査(舌苔の付着程度,口腔粘膜の湿潤度,咬合力検査,オーラルディアドコキネシス,舌圧,咀嚼能力検査,聖隷式質問紙)の結果を抽出し,後方視的調査を行った。口腔機能低下症該当者の割合を算出し,口腔機能低下症(有無の2群),年齢(65~69,70~74,75~79,80歳以上の4群),残存歯数(19歯以下,20歯以上の2群)にそれぞれ群分けし,関連性を統計学的に分析した。

 結果:対象者の16.4%が口腔機能低下症に該当していた。年代別では該当者の割合について統計学的に有意な差はみられなかったが,残存歯数別検討では19歯以下の群において該当者の割合が有意に高くなっていた(p<0.05)。また,ロジスティック回帰分析の結果,口腔機能低下症該当の有無に関して残存歯数が有意に関連していた(オッズ比0.90,95%信頼区間0.85~0.96,p<0.05)。

 結論:認知症や低栄養が認められない自立高齢者では,口腔機能低下症は加齢よりも残存歯数が少ないことが関連要因となる可能性が示唆された。

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© 2019 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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