本調査報告では,2011年1月~2019年12月の間に当院が歯科訪問診療を施行した介護老人福祉施設(特養)および介護老人保健施設(老健)の入所者の概要および歯科治療の内訳を比較した。
同期間に当院が歯科訪問診療を施行した症例(新患数)は6,303例であり,特養および老健の症例はそれぞれ1,742例(27.6%),1,082例(17.2%)を占めていた。初回訪問診療時の平均年齢(標準偏差)は,特養86.0歳(7.8歳)と老健85.4歳(8.1歳)の間に有意差は認められなかった。しかし,歯科訪問診療をするにいたった医科原疾患として,特養では老健と比較して,認知症(62.5% vs 53.8%,p<0.001),肺炎(16.5% vs 5.7%,p<0.001)および脳性麻痺(9.9% vs 4.3%,p<0.001)の症例の比率が有意に高かった。他方,特養では老健と比較して,歯周治療を施行した症例の比率(58.0% vs 62.0%,p<0.05)は有意に低かったが,摂食機能療法を施行した症例の比率(32.3% vs 12.1%,p<0.001)は有意に高かった。しかし,義歯新製,義歯調整・修理,抜歯,歯冠補綴,根管治療などの他の歯科治療を施行した症例の比率は,特養と老健の間で有意差は認められなかった。