近年,超高齢社会を迎えた本邦において,認知症患者は増加傾向にある。本研究では,高齢者医療センターにおける初診患者を対象に口腔内の状態を調査し,認知症の有無との関係について調査を行ったので報告する。
調査は,2015年1月から2019年1月までの期間に,順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターの歯科口腔外科に,一般歯科処置を希望して受診した初診患者661名(認知症群,109名;対照群,552名)を対象に,性別,年齢,現在歯,健全歯,未処置歯,処置歯,喪失歯,義歯使用の有無について横断的に調査し,統計学的に分析した。
認知症の有無に関して年齢および性別を調整した多変量ロジスティック回帰分析を行った結果,上下顎の現在歯数が19本以下の群,健全歯と処置歯の合計が9本以下の群,未処置歯および喪失歯が20本以上の群において年齢と性別を調整しても,認知症をもつ者が有意に多かった(p<0.05)。義歯の使用率は,認知症群65.5%,対照群が41.5%であった。義歯使用の有無に対しては有意な関連が認められなかった。
本研究の結果から,初診患者における認知症をもつ人は要治療歯が多く,認知症の有無にかかわらず義歯を使用していることがわかった。