老年歯科医学
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認定医審査症例レポート
口腔機能低下症を伴う義歯不適合の高齢者に対して口腔健康管理を行った症例
河野 立行中島 純子上田 貴之
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2022 年 36 巻 supplement 号 p. 34-37

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抄録

 緒言:義歯不適合を主訴として来院した患者に対し,義歯製作を含む口腔健康管理を行うことで良好な結果が得られたので報告する。

 症例:86歳の男性。義歯が緩く,疼痛もあり食事しづらいことを主訴に来院した。上下顎総義歯を装着し問題なく使用していたが,近年,義歯安定剤を使用しても下顎床下粘膜に疼痛があり,食事がしづらくなってきたため来院した。口腔内は,上下顎床下粘膜に義歯性口内炎と思われる発赤があり,下顎に褥瘡性潰瘍を認めた。上下顎義歯は維持・安定不良であり,義歯の染め出し試験の結果から全体的に清掃不良であった。さらに,無歯顎であることや義歯の汚染が著しいことから,口腔機能の低下も疑われた。また,間質性肺炎のため在宅酸素療法を施行中であり,活動量や筋力低下も疑い,義歯不適合以外の食事困難感の要因の精査目的に口腔機能精密検査を施行した。その結果,口腔衛生状態不良,舌口唇運動機能低下,咀嚼機能低下および嚥下機能低下が該当した。以上より,上下顎総義歯不適合および口腔機能低下症と診断し,上下顎総義歯の製作を含む,口腔機能管理を実施した。なお,口腔機能訓練は段階的に行った。

 経過:義歯装着2カ月後には,主訴が改善した。舌苔の付着程度,佐藤らの咀嚼機能評価,グルコース溶出量による咀嚼能率,嚥下機能(EAT-10),反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテストでの改善が認められた。また,オーラルディアドコキネシスでは検査値の向上が認められた。

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© 2022 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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