2021 年 36 巻 supplement 号 p. 39-43
緒言:高齢者の増加により,循環器疾患を抱える患者が多くみられる。今回,循環器疾患により抗凝固療法を長期にわたり継続していた患者の全身状態と安全に配慮した処置が有効であった症例を経験したので報告する。
症例:65歳,女性。20代に左頸動脈の高安動脈炎(大動脈炎症候群)を発症後,大動脈弁閉鎖不全を合併し,弁置換術・抗凝固療法を行っている。口腔内は,左側臼歯部ブリッジの動揺による咀嚼障害が認められた。
経過:医科歯科連携を行い,全身状態を把握したうえで,安全に歯科的観血術(抜歯)施行,その後の補綴処置で咀嚼機能の改善が認められた。
考察:数カ月の血液データの推移を分析し,ガイドラインに基づき,抗凝固薬継続下・術前抗菌薬投与下での観血的処置,患者希望に寄り添った補綴設計を行えたことが,予後良好の要因となったと思われる。