2022 年 37 巻 1 号 p. 34-45
目的:高齢者のQOLを向上させ,健康寿命を延伸するため,わが国では予防的介護サービスを含む複数の福祉政策が実行されている。一方,治療法の進歩に伴い,高齢口腔がん患者に対しても根治手術や救済療法が行われているが,治療後のQOL低下を避けることはできない。しかし,治療後の高齢口腔がん患者に対する予防的介護サービスの効果に関する研究はない。そこで,本研究では高齢口腔がん患者と一般の高齢者を介護予防に焦点を当てて比較検討した。
対象と方法:昭和大学歯科病院口腔リハビリテーション科を受診した口腔がん治療後の高齢患者64名を対象とした。一般高齢者は,大田区で2020年度に実施した「高齢者一般調査」対象となった4,047名とした。調査は質問紙調査とした。
結果・考察:口腔がん患者は,大田区一般高齢者と比べて手段的日常生活動作が有意に低下していたが,週1回以上の外出をする割合は多く,健康に対する主観的健康観は有意に高かった。さらに学習・教養サークルや地域活動への参加の割合が多い傾向にある一方,社会活動への参加の割合が減少していた。また,口腔がん患者では半年前と比べた摂食嚥下機能は有意に低下していた。この摂食嚥下機能の低下は,加速した老化と口腔の虚弱が原因である可能性が示唆された。
結論:高齢口腔がん治療後患者では口腔機能を維持し,社会的苦痛を軽減するための支援システムとプログラムが必要であると考えられた。