老年歯科医学
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臨床報告
頸部壊死性筋膜炎の術後に嚥下障害を合併した高齢患者に対し,多職種連携による早期介入を行った1例
園山 卓谷口 広祐前田 顕誠中島 健
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2022 年 37 巻 1 号 p. 25-33

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抄録

 今回われわれは,頸部壊死性筋膜炎の手術後に嚥下障害をきたした高齢患者に対し,多職種連携による早期介入を行い,改善を認めた症例を経験したので報告する。

 患者は既往歴に糖尿病をもつ71歳男性。右側顎下部,口底部の腫脹を主訴に当院へ救急搬送された。CT所見より口底部ガス壊疽を疑い,同日口腔外切開排膿消炎術を施行した。その後,ガス貯留が鎖骨上部,縦隔部に及んだため,病日7日目に耳鼻科,外科と合同で再度口腔外切開排膿消炎術を施行した。病理組織検査の結果,頸部壊死性筋膜炎の診断を得た。抗菌薬投与,連日の洗浄で病日26日目に消炎が得られた。経口摂取の開始に際して,病日19日目に嚥下内視鏡検査(以下VE)を施行したところ,重度の嚥下障害を認めた。言語聴覚士,看護師,管理栄養士を含む摂食嚥下チームによる多職種介入を開始し,間接訓練,直接訓練を行った。その結果,病日43日目に3食ゼリー食(1j)での経口摂取が可能となった。病日49日目のVE所見としては,食塊が喉頭蓋に到達した際の円滑な嚥下反射惹起と咽頭クリアランスの改善が認められた。その後,間接訓練を併用しながら段階的に食形態を上げていき,病日54日目に軟菜食摂取可能となった。退院前に管理栄養士による食事指導を行い,病日57日目に自宅退院となった。

 頸部壊死性筋膜炎では,術後合併症として嚥下障害をきたす可能性が高いことを念頭に置き,早期から多職種介入を検討する必要があると考えられた。

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© 2022 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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