目的:本研究は,非経口摂取患者における口腔衛生管理後の口腔湿潤度を経時的に測定し,その経過と全身状態や服用薬剤などの関連について明らかにすることを目的とした。
対象:北九州市内の急性期総合病院に2020年9月から2021年3月に入院した患者のうち,非経口摂取患者で安静時の開口と口腔乾燥の所見が認められた103名(男性55名,女性48名,平均年齢84.5±8.6歳)とした。
方法:口腔水分計ムーカス®を用いて,口腔衛生管理前,口腔湿潤剤塗布直後,塗布1時間後,塗布2時間後,塗布3時間後に口腔湿潤度を計測した。対象者の基本情報は,電子カルテより抽出した。経時的な口腔湿潤度の評価を行うとともに,口腔湿潤度の変化に関連する因子について,二項ロジスティック回帰分析を用いて検討した。
結果:非経口摂取患者において,口腔衛生管理後の口腔湿潤度は,時間が経過するに従って低値を示した。二項ロジスティック回帰分析の結果,利尿剤(p=0.012)と去痰剤(p=0.033)は口腔湿潤度を低下させる因子であることが示された。
結論:非経口摂取患者において口腔衛生管理後の口腔湿潤度は,時間が経過するに従って低値を示した。利尿剤と去痰剤を使用している場合は口腔湿潤度の経過に注意が必要であることが示唆された。