2024 年 38 巻 supplement 号 p. 74-79
緒言:脳血管障害後の高齢患者に舌接触補助床(PAP)を適用し良好な結果が得られたため,その概要を報告する。
経過:71歳,女性。30年前に左被殻出血術後,右半身麻痺を認めたが,Activities of Daily Livingは自立していた。今回,転倒による右大腿骨転子部骨折で手術を施行し,入院14日目に右上下肢麻痺の増悪と舌運動機能不良が出現し意識障害となった。精査の結果,症候性てんかんによる症状と判断され絶食となった。入院21日目に嚥下内視鏡検査を施行した結果,送り込み障害はあるが明らかな誤嚥所見は認めなかった。経口摂取を開始したが,摂取量が増えず入院56日目に胃瘻造設となった。67日目に意識レベルが改善してきたため,義歯修理を行った。79日目に義歯口蓋部をPAP形態に形成し,入院92日目にVF検査を行ったところ,義歯なしでは口腔通過時間48秒であったが,PAPを付与した義歯を装着すると口腔通過時間は9秒と送り込み障害が改善した。施設退院後に経口3食に移行し,その後自宅退院となった。
考察:本症例は,症候性てんかんをきっかけに経口摂取が不可となった。しかし,嚥下障害の病態が準備期・口腔期が主体であったため,上顎義歯口蓋部にPAP形態を付与して舌と口蓋との接触不良による送り込み障害を改善したことにより,経口摂取の再獲得にいたったと考えられる。