2024 年 39 巻 2 号 p. 109-117
目的:咀嚼機能は残存歯数に大きく依存しており,残存歯数と食事摂取状況との関係について研究が行われてきた。しかしこれらの研究では,摂取食品に関するデータは調査回答者の記憶に基づいて収集されており,客観的なものではない。したがって,自己申告による食事摂取量調査に加え,食事の画像を記録・解析することで,より正確な食事摂取量の測定が可能になると考えられる。本研究の目的は,高齢者における残存歯数と食事摂取量との関連を,自己申告による記録だけでなく,食事の画像を用いて調査することである。
方法:31名の研究参加者の残存歯数と食事摂取量を調査した。歯が20本未満の群と20本以上の群について共分散分析(ANCOVA)を行い,食事摂取量と栄養素摂取量を比較した。
結果:レチノール,ビタミンB12の摂取量は,20本以上の歯がある群で20本未満の群より有意に多かった(レチノール:0-19;216.24(301.48),20≤;627.82(716.26),p=0.01),(ビタミンB12:0-19;3.13(1.63),20≤;5.87(1.63),p<0.01)。いずれの食品類においても20本未満と20本以上の群の間に有意差はなかった。
考察:残存歯数は咀嚼能力に影響し,栄養不良を防ぐことができる。本研究では,いずれの食事群においても摂取量に有意差は認められなかった。同じ食品群であっても,個々の食品によって咀嚼の難易度は大きく異なる。硬さや性質によって食品群を細かく分類すれば,摂取量に差が生じる可能性がある。限界はあるが,本研究では栄養摂取状況を被験者の主観的な報告だけでなく,写真画像解析も行っているため,より実情に近い栄養摂取状況を反映している。