老年歯科医学
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認定医審査症例レポート
広範囲の脳梗塞により胃瘻造設となった患者に対し,多職種連携により 3食経口摂取可能となった症例
大塚 あつ子木村 将典谷口 裕重
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2025 年 39 巻 supplement 号 p. 117-121

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抄録

 緒言:重度摂食嚥下機能障害と診断された患者に包括的アプローチを行うことで,3食経口摂取が可能となった症例を報告する。

 症例:68歳女性。小脳・延髄・視床梗塞で入院となった。

 経過:初診時のSGAは高度の栄養不良で,BMI 18.1 kg/m2,第10病日目の機能的自立度評価(FIM)は21点であった。第37病日目の胃瘻造設後に当科に嚥下機能評価依頼があり,第41病日目のVEで重度の摂食嚥下機能障害と診断した。第49病日目のVFで左側食道入口部の通過障害とゼリーの喉頭侵入を認めたが,体幹右側傾斜,頸部左側回旋を行ったところ,喉頭侵入は回避できたため,看護師とSTが直接訓練を開始した。第76病日目のVEで,粥ゼリー・ミキサー食は,食道入口部の通過障害の残存を認めたため,バルーン法を多職種で開始した。第105病日目のVFでは,軟飯・きざみとろみ・中間のとろみ水の摂取ができ,FIMは81点,mRSはグレード3に改善し自宅退院となった。1か月後の外来診療で在宅での食事や訓練指導を実施した。

 考察:本症例では摂食機能障害を認めたが,胃瘻を介した栄養管理が十分になされていたため,リハビリテーションを強化することができた。今回,体幹調整を行ったうえでバルーン法などの訓練を多職種で実施したことで,より多くの訓練回数を確保でき,また,退院後にも多職種による介入を行ったことで摂食嚥下機能のさらなる改善につながったと考える。

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