老年歯科医学
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認定医審査症例レポート
球麻痺症状を伴う筋萎縮性側索硬化症患者に対し,早期の補綴的アプローチにて経口摂取を維持した症例
武田 瞬片倉 朗
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2024 年 39 巻 supplement 号 p. 89-94

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抄録

 緒言:筋萎縮性側索硬化症(ALS)における摂食嚥下障害はいずれの病型であっても必発するが,その程度や進行速度は症例によって異なる。今回,ALS患者に対し早期の補綴的アプローチにより口腔機能を回復し,舌接触補助床(PAP)を用いて嚥下障害に対応しQOLの向上を図った症例を経験したので報告する。

 症例:74歳男性,義歯の痛みと口腔内の粘つきを主訴に来院。フラビーガムと全部床義歯の適合不良が顕著であった。喋りにくさの自覚症状と口腔機能精密検査から義歯不適合および口腔機能低下症と診断。その後,ALSと診断されたことから球麻痺,摂食嚥下障害に診断を改めた。

 経過:PAP新義歯により食物の口腔内残留が解消し,舌圧(5.7→12.7 kPa),咀嚼機能(35→121 mg/dL)および口腔関連QOLの改善が得られた。その後胃瘻造設となったが,とろみ付きの食事や複数回嚥下の食事指導を行い経口摂取と併用した。患者は最期まで経口摂取を継続していたが,呼吸状態の悪化により逝去した。

 考察:複製義歯による印象と咬合の同時採得,フラビーガムの無圧印象,リマウント咬合調整の応用により機能的な義歯製作が可能となり,迅速に器質性咀嚼障害の回復を図ることができた。一方で,球症状の進行により顕在化していく運動障害性咀嚼障害に対しては,口腔機能の再評価とともに,食形態変更などの代償的アプローチの重要性が増してくると考えられた。

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