抄録
Cysticfibrosisのモデル動物と考えられているレセルピンの連続投与ラットの顎下腺を用いて, m-およびp-オクトパミンとドーパミンの顎下腺に及ぼす作用を検索した。レセルピン (5mg/kg) を1日1回投与した群 (Group1), 1日1回2日間投与した群 (Group2) およびレセルピン (0.5mg/kg) を1日1回, 6日間連続投与した群 (Group3) に分け影響を調べた。著者らは前報22) で同じプロトコールのラットに5種類の異なるレセプターを刺激すると思われる分泌刺激薬5種類 (ピロカルピン, イソプロテレノール, ノルアドレナリン, クロニジンおよびフィサレミン) を用いて, レセルピン投与を行って化学的に交感神経を遮断したラット顎下腺の分泌応答を検索した。その結果, レセルピンによる化学的交感神経遮断下では上記の分泌刺激薬は当該ラット顎下腺の唾液分泌を著しく促進させること, 特にノルアドレナリンとフィサレミン刺激は顕著に冗進すること, また, チラミンの催唾作用は完全に抑制されることを述べた。前報22) に刺激され今回は, m-およびp-オクトパミンあるいはトーパミンの分泌作用を, 実験的老化状態と呼ぶことのできる, 化学的交感神経遮断下に検索した。実験動物には9週齢, 雄性のSD系ラット (最終の実験日が9週齢になるようプロトコールを調整) を各実験ごとに5-10匹ずつ用いた。分泌刺激薬にはm-オクトパミン (10mg/kg) およびp-オクトパミンとドーパミン (どちらも30, 50および100mg/kg) を腹腔内 (i.p.) に用い, カニュレーション法により1h間唾液を採取した。また各種の代表的な阻害剤 (プラゾシン, プロプラノロール, アトロピン, CdCl2) もp-オクトパミン (100mg/kg) と併用投与に用いた。分泌唾液量は重量法, タンパク濃度はLowry法, タンパク成分は各種の電気泳動法により検討した。いずれの分泌刺激薬もその催唾作用は, チラミンとは異なり, 化学的交感神経遮断下で完全に抑制されることはなかった。しかし, m-オクトパミンとドーパミンの催唾作用は, 投与量の多少にかかわらず, 顕著に抑制された。また, p-オクトパミンは低投与量時に抑制が認められた。タンパク濃度には大きい影響は認められなかったが, 総分泌タンパク量はm-オクトパミンおよびドーパミンに抑制が認められた。各種の阻害剤との併用実験では, プラゾシンに有意な分泌抑制がみられたのみで, その他の阻害剤には有意な作用は認あられなかった。また, タンパク成分のβ型からα型の変換は化学的交感神経遮断下では認あられず, プラゾシンによりα型からβ型への変換が認あられた。
以上のことから, 今回用いた3種類のバイオアミンは, チラミンほどではないが, レセプターに直接に働く作用の他に, チラミンと同じように, 神経終末部よりノルアドレナリンを分泌させる作用も一部もつのではないかと推測された。また, これらのバイオアミンは, ノルアドレナリンと異なり22) , タンパク成分の変換機構には影響を与えないと思われた。また, 化学的交感神経遮断は分泌するタンパク成分に質的な変化を与えるとは考えられなかった。