老年歯科医学
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高齢者口腔領域の化膿性炎症における全身管理
佐藤 健林 直樹糸山 暁金 賢成廣瀬 陽介廣瀬 伊佐夫
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1996 年 10 巻 3 号 p. 210-217

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抄録

今回, 著者らは昭和59年10月から平成6年12月までの10年間に全身麻酔下に切開排膿術を施行した72歳から91歳までの男女5症例について術中, 術後の管理上の問題点を検討した.全症例に循環器系疾患, 内分泌疾患, 膠原病などの内科的基礎疾患の合併を認めた.手術は5症例中2例で緊急手術が行われた.麻酔導入は全症例で緩徐導入法が選択され, 気管内挿管法は3症例で意識下気管内挿管が行われた.その他, エンドトキシンショックのため病棟で緊急に気管内挿管を行つた後, 手術室に入室した症例や手術室に入室後少量の鎮静薬投与により呼吸抑制をきたし緊急気管内挿管を行つた症例があつた.麻酔維持は3症例がGOと低濃度の揮発性麻酔薬で他の2症例はGO-NLA変法により行った.術中管理ではエンドトキシンショック症例で循環管理にドパミンを使用したほか, 糖尿病合併患者でインスリン療法が必要となった症例があつた.術後管理においては覚醒遅延や呼吸抑制に対する呼吸管理を必要とする症例があった.以上の経験から, 高齢者に発症した重篤な化膿性炎症に対する切開排膿手術は急速に悪化する全身状態のもとで行われることが多く, 術中・術後の患者管理においては, 加齢による身体機龍の低下と内科的疾患の合併に配慮して呼吸・循環・代謝・栄養の管理を慎重に行わなければならないと考えられた.

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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