老年歯科医学
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在宅寝たきり老人の口腔ケアに関する研究
第1報 歯科保健に対する保健婦の意識
下山 和弘岡田 弥生内田 達郎石川 直人小林 章二長尾 正憲
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1996 年 10 巻 3 号 p. 218-227

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抄録

在宅寝たきり老人の口腔環境を快適に保つためには, 歯科医師, 歯科衛生士は在宅ケアにおいて重要な役割をもつ保健婦と密接な連携をとる必要がある.在宅ケアでの歯科保健の充実を図るためには, 歯科保健に対する保健婦の意識および行動を明らかにすることが有効であると考え, 東京都および埼玉県で勤務する保健婦を対象に在宅ケアに関連する事項を中心に歯科保健に関するアンケート調査を行った.保健婦161名から回答が得られ, 記載不備のない155名の回答を分析した.回答者の40.0%は保健婦としての経験年数が5年以下であった.自分自身が口腔清掃指導を受けた経験のある保健婦の割合は81.9%, 保健婦の72.3%が口腔清掃に対して熱心またはどちらかといえば熱心と考えていた.歯科全般に対する知識が不十分と思っている者の割合は63.2%であった.在宅ケアにおける保健婦の業務としての歯科の位置付けでは, 重要性を「中位」とした者の割合は76.1%であった.在宅寝たきり老人を対象とした口腔清掃の教育・指導を受けた経験のある者の割合は18.1%, 在宅寝たきり老人の歯科保健指導のための教育・指導を大いに希望する者の割合は51.6%であった.これらの結果から, 歯科保健に関する教育, 指導が必要とされており, 歯科医師, 歯科衛生士から保健婦への積極的なアプローチが保健婦と歯科医師, 歯科衛生士との連携を強め, 口腔領域の在宅ケアの質の向上に繋がると考える.

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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