老年歯科医学
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外来高齢者歯科治療時における全身管理症例の臨床統計的検討
糸山 暁林 直樹佐藤 健金 賢成廣瀬 陽介廣瀬 伊佐夫
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1996 年 10 巻 3 号 p. 244-249

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抄録

1985年4月から1995年3月までの10年間に本大学病院外来を受診し, 各診療科より当科に術中全身管理を依頼された65歳以上の高齢者患者を対象として臨床統計的検討を行った.
当科で術中全身管理を行った外来総数は1, 621例であった.そのうち高齢者は236例で, 全体の14.6%を占めていた.性別では, 236例中男性128例 (7.9%), 女性108例 (6.7%) であった.平均年齢は男性71.2±5.29歳, 女性72.8±5.24歳であった.
全身疾患の合併率は94.9%で, 循環器系疾患が78.4%と最も多く, そのうち高血圧症が50.7%を占めていた.高齢者の特徴である複数の全身疾患合併率は57.1%に認められ, 1人当たりでは1.53の合併数であった.
術中の全身管理方法は全例血圧計, 心電計, パルスオキシメーターなどモニターの監視下で, 笑気吸入鎮静法43例, 静脈内鎮静法22例, 笑気吸入鎮静法と静脈内鎮静法を併用した症例10例, Stand by症例161例であった.
術中血圧の異常上昇に対して, Ca++拮抗薬を主とする降圧薬を用いて積極的な循環管理を行った症例が43例あり, 高齢者全体の18.2%を占めていた.
将来, さらに増加する高齢者の歯科治療への対応には, 歯科医師の高齢者の特殊性の認識および管理スタッフと設備の充実を図り, 積極的な全身管理を行って合併症の増悪や, 二次的合併症発症の予防が必要である.

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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