1996 年 10 巻 3 号 p. 237-243
近年, 複製義歯を用いた全部床義歯製作法が行われるようになってきた.本論文では, われわれが行っている複製義歯を用いた全部床義歯製作方法について報告した.
複製義歯を用いた義歯製作の一般的な手順としては, まず旧義歯の咬合が適正かどうかを調べ, 問題があれば主に下顎義歯の咬合面を修正する.また, 義歯床辺縁や粘膜面に問題があればリライニング用レジンで修正を行う.次に, 粘膜調整材を用いて粘膜調整を行いながら, 床下粘膜を正常に戻すとともに適正な辺縁形態を求める.このようにして改造した旧義歯を複製義歯用フラスコを用いて複製し, 複製した義歯で印象採得と咬合採得を同時に行う.
複製義歯を用いて義歯を製作する方法は, 旧義歯を改造しながら行えるため, 患者からあるいは口腔からの情報を得やすいとともに, 旧義歯をそのまま使えることから患者の負担も少ない.また, 患者が改造した義歯に慣れているため新義歯装着後に患者の満足も得やすく, 装着後の調整回数も少ない.そのため, 本法は特に高齢患者には有効な義歯製作方法と思われる.