老年歯科医学
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要介護高齢者とデンチャー・マーキング
有床義歯への「ネーム入れ」の効果
金井 博文笠原 浩太田 慎吾小柴 慶一穂坂 一夫渡辺 達夫山岸 利夫伊藤 充雄
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1996 年 11 巻 1 号 p. 18-24

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抄録

高齢者が入所している病院や施設において, 職員が置き忘られた義歯の所有者を探すことは難しく, 所有者が知的障害を伴えば, さらに困難である。有床義歯のマーキング (ネーム入れ) についての要介護高齢者自身のデマンドを明らかにするために, 有床義歯へのネーム入れについての希望の有無について, 面接による質問調査を行った。ネーム入れを希望した者は, 調査対象者36名中25名で, 痴呆の疑いの有無とネーム入れ希望との間に関連性は認あられなかつた。
ネーム入れ希望者の義歯には, 漢字ラベルライターおよび透明光重合レジンを用いる著者らが考案した方法で, 施設内にて実際にネーム入れを行い, 1ヵ月および1年後の予後を追跡調査するとともに, 施設職員, 保護者にその有用性についてのアンケート調査を行った。1ヵ月後の予後調査では, 義歯42床中の1床 (2.4%) のみに名前表示部位の辺縁の一部にわずかな破折を認めた。1年後の予後調査では, 25床中の4床 (16.0%) に辺縁の剥離や着色などの変化が認められたが, いずれも軽度のものであつた。
ネーム入れを行つた後での施設職員, 保護者に対するアンケート調査の結果では, 義歯の個人識別や紛失防止等の理由によりネーム入れは有用であると評価されていた。今回行つたマーキング法は, 広く応用できるものと考える。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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