老年歯科医学
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東京都葛飾区における在宅寝たきり老人の歯科治療
第 3 報 たんぽぽ歯科診療所における全身管理症例に関する統計的検討
吉田 幸弘京田 直人高田 耕司見崎 徹秋本 康志野村 千秋臼井 潔根岸 哲夫安斎 平治
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1996 年 11 巻 1 号 p. 39-43

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抄録

葛飾区歯科医師会の在宅寝たきり老人専用の歯科診療所 (たんぽぽ歯科診療所) において全身管理を施行した症例について統計的観察を行つた。
対象は平成2年8月から平成7年9月までの5年2ヶ月間に当施設を受診した患者488人の中で歯科麻酔科医が全身管理を行った症例155人とした。
対象症例の平均年齢は, 78.6歳で男女別では女性が多く見られた。治療内容は150例 (96.7%) が外科処置であった。術前合併症は, 脳血管障害が82人 (53%) と最多を占めていた。術中の管理方法は笑気吸入鎮静法を併用したのが6例 (3.8%) で, 酸素投与の症例が7例 (4.5%) で残りはモニターによる監視を行った。術中合併症は, 血圧上昇が7例, 心電図異常が11例に認められた。術中の収縮期圧は平常時に比べ平均32mmHg, 拡張期圧は平均17mmHgの有意な上昇を示し, 心拍数も同様に平均13beat・min-1上昇した。パルスオキシメーターによる動脈血酸素飽和度は, 平均96.5%から94.5%へと有意に低下し, 治療操作により呼吸が抑制される傾向がみられた。血圧上昇, 心電図異常, 高血糖値で処置を中止した症例が20例みられた。
在宅寝たきり老人は, 脳血管, 循環器系合併症を有していることが多く, 術中の循環器系の変動が大きいため, 循環器系モニターが必須であること, また, 治療中には呼吸抑制が生じやすいため, パルスオキシメーターの有用性が高いと思われた。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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