老年歯科医学
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高齢咀嚼障害患者の一症例
補綴処置による筋電図及び顎運動から見た機能回復
高岡 征樹島谷 肇藤原 到奥田 啓之兼平 治和前田 照太井上 宏
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1996 年 11 巻 1 号 p. 44-51

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抄録

高齢者の生理的機能の老化にともない顎口腔系の機能も同様な変化がみられることはよく知られている。このような環境の中で, 高齢者が新義歯に適応していくことは長期間を要すると思われる。したがって高齢者において口腔内の急激な環境変化を少なくし, 最終義歯にスムーズに移行させることは今後, 補綴臨床においてますます重要になる。今回我々は, 咬合高径の低下, 下顎の偏位および顎関節部痙痛を伴なう高齢者に顎位の修正を行い, 旧義歯の改善, 暫間義歯, 最終義歯と移行する経過をEMG, MKGおよび顎関節X線写真から長期的に記録し, 観察を行った。その結果, ガム咀囎時, 時間的要素の平均値とCVはともに経日的に暫間義歯装着時の値に近づき, 患者固有のリズムに回復した。また鰯活動電位は, 義歯装着直後には一旦低下するものの経日的に増加の傾向を示した。
一方顎運動経路は, 暫間義歯装着直後から経日的に各ストロークの中心咬合位に収束し, 一定した涙滴状を示した。さらに顎関節X線写真では, 両側穎頭位の位置的改善とともに可動性の増加がみられた。
以上より高齢者の補綴処置の症例を咀噛筋筋電図, 顎運動および顎関節X線写真の長期的記録から, 時間経過にともなう義歯への適応が推察され, 有効な治療であることを明らかにした。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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