老年歯科医学
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口腔乾燥症患者に関する臨床的研究
麦門冬湯の効果の特徴と適応症例について
牧 かおり各務 秀明大野 雄弘上田 実
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1996 年 11 巻 2 号 p. 111-117

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抄録
口腔乾燥症患者26名に対し麦門冬湯を投薬し, その適応症例と特徴について検討した.患者のうち4名はシェーグレン症候群であり, 他はいわゆる口腔乾燥症患者で, 放射線性口腔乾燥症は含まれていなかった.シェーグレン症候群以外の22名において, 唾液分泌量の減少をおこしうる薬剤の服用は, 17名に認あられた.自覚症状の改善は26名中19名 (73%) に認められ, 他覚的所見では26名中14名 (54%) に改善を認めた°また, 投薬前と治療終了時において, 安静時全唾液分泌量には有意な増加が認められ, 平均増加量は0.04±0.03ml/minであった (p<0.05).投薬開始から自覚症状, 他覚的所見の改善までの期間は, ほとんどの患者で6週間以内であった.
次に, 麦門冬湯の有効例および無効例の特徴について, 年齢, 性別, 服用薬物, 唾液腺機能を中心に検討した.年齢, 性別については有効例と無効例の相違は認められなかった.
また, 麦門冬湯の効果は, 投与薬物の種類, 唾液腺機能障害の程度には影響を受けないと考えられた.以上から, 麦門冬湯は口腔乾燥症患者に対し, その原因や年齢, 性別によらず使用可能であり, 有用な処方と考えられた.
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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