抄録
今回われわれは, 介護を要する高齢総義歯装着者に限定して義歯の汚れとそれに関連する項目について自立して生活している高齢総義歯装着者との比較調査を行った。
調査対象は滋賀県にある特別養護老人ホーム入居者および併設の病院に入院あるいは通院し, 上下顎いずれかに総義歯を装着している者である。この内, ADLで部分介助の項目があるものの義歯の清掃は自分で行っている者29名を調査群 (男性5名, 女性24名, 平均年齢80.6歳), 自立生活可能な者25名を対象群 (男性1名, 女性24名, 平均年齢78.2歳) とした。
これら対象者にっいてデンチャープラークの付着率, 清掃回数, 清掃方法, 就寝時の義歯装着, 装着時間, 適合度, 顎堤粘膜の発赤・腫脹, カンジダ菌の検出, 唾液中のS.mutans量, 唾液潜血反応を調べた。
調査群では義歯の清掃回数が少なく, 補助的に義歯洗浄剤を用いていたが, デンチャープラークの付着率は高かった。また, カンジダ菌の検出率も高い傾向を示し, 清掃方法に問題があるとが示唆された。加えて, 調査群では唾液中のS.mutans量が多いものの割合や潜血反応の割合も高い傾向であり, 残存歯や粘膜の状態も悪いことが示唆された。
これらのことから, 義歯の清掃に関して本人および介護者に対する指導が必要と感じられた。