老年歯科医学
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要介護高齢総義歯装着者の咀嚼機能の評価
山内 六男小川 雅之福田 倫明棚橋 正志金 昇孝
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1997 年 11 巻 3 号 p. 181-185

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抄録

今回われわれは, 介護を要する高齢総義歯装着者の咀嚼機能について自立して生活している高齢総義歯装着者との比較調査を行った。
調査対象は滋賀県にある特別養護老人ホーム入居者および併設の病院に入院あるいは通院し, 少なくとも上下顎いずれかに総義歯を装着している者である。これらの義歯は適合性や咬合に明らかな異常は認あられなかった。この内, ADLで部分介助の項目があるものの義歯の清掃は自分で行っている者29名を調査群 (男性5名, 女性24名, 平均年齢80.6歳), 自立生活可能な者25名を対照群 (男性1名, 女性, 24名, 平均年齢78.2歳) とした。これら対象者に内田ら (1992) の食品摂取状況調査表に記入を行わせ, 摂取可能率を求めた。また, デンタルプレスケール30H (フジフィルム社) を用いて咬合面積および咬合力を求めた。
咬合面積は調査群で17.9±11.3mm2 (平均±標準偏差), 対照群で19.0±11.2mm2であった。咬合力は調査群で104.8±65.9N, 対照群で104.0±55.2Nであった。摂取可能率は調査群で61.9±17.5%, 対照群で61.3±13.8%であった。これらの測定値は両群間で有意な差は認められなかった。また, 両群の摂取可能率と咬合面積および咬合力との相関について検討したところ, 有意な相関は認められなかった。
以上の結果から, 要介護高齢総義歯装着者であっても, 自立して生活している高齢総義歯装着者の咀嚼機能と差がないことが示唆された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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