老年歯科医学
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義歯の清掃
デンチャーブラッシング荷重の測定
柿本 和俊浅井 崇嗣権田 悦通稲田 條治吉田 洋木田 順子
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キーワード: 義歯, 清掃, ブラッシング, 荷重
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1997 年 11 巻 3 号 p. 221-230

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抄録

義歯用ブラシや歯ブラシを使用する機械的清掃の効果を高めることを目的として, 義歯の清掃動作の特徴を観察した。
被験者は総義歯を装着している高齢者10名および義歯使用未経験な高齢でない歯科スタッフ10名である。実験には義歯用ブラシ3種類, 歯ブラシ2種類を用いた。単軸ひずみゲージを頸部に貼付した各ブラシを用いて, 被験者に実験用上顎総義歯を20秒間任意に清掃させた。清掃中のひずみ波形をブラシの刷掃面に加わった荷重量に換算した波形から, ブラッシング荷重 (以下/デンチャーブラッシング荷重) および清掃動作のリズムについて検討した。また, 義歯清掃における筋力の影響について調べるために握力を計測した。
高齢者ではブラッシング動作中にブラシに荷重を全く加えていない時間が存在したが, 歯科スタッフでは絶えず荷重を加えていた。高齢者は歯科スタッフよりもブラッシングのリズムが遅かった。デンチャーブラッシング荷重は, 高齢者は歯科スタッフよりも小さく, また, 握力と正の相関があった。デンチャーブラッシング荷重は, ブラシの種類や刷毛の形態によっても影響を受けた。刷掃面が狭いブラシのデンチャーブラッシング荷重は高齢者と歯科スタッフとでは大きな差があった。
以上の実験成績を総合すると, 歯科スタッフがブラッシング荷重をかけやすいブラシは, 必ずしも高齢者が荷重を加えやすいとはいえない。したがって, 実際に患者にブラシを使用させて, その患者にとって使用効率の高いブラシを選択することが必要である。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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