老年歯科医学
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総義歯調製に関する調査
第1報無歯顎患者の構成と顎堤形態
祇園白 信仁森谷 良彦伊藤 智加土田 桂森谷 良孝小畑 由布子山口 研一川口 隆彦
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1997 年 11 巻 3 号 p. 210-220

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抄録

総義歯は, 無歯顎者のQOL向上に重要な役割を担っている。そこで, 総義歯調製の実態を疫学的に検討し, 無歯顎患者の的確な診断と治療計画立案への一資料とすることを目的に, 日本大学歯科病院総義歯補綴科にて上下顎に総義歯を調製した患者383名を対象に調査を行い, 以下の結論を得た。
1.無歯顎患者の平均年齢は68.3歳で, 60および70歳代が全患者群の約68%を占めた。
2.総義歯の経験有無では, 全患者の約77%が既に上下顎に装着経験を持っており, 次いで下顎経験無し, 上下顎経験無しそして上顎経験無しの順であった。
3.総義歯の経験年数は上顎10.6年, 下顎10.4年であった。使用年数は上顎6.8年, 下顎6.5年であったが, 4年未満で再調製を希望している患者が約1/2を占あた。
4.全身既往歴では383名中161名が特記すべき既往歴を有しており, 消化系の疾患, 循環系の疾患, 新生物が多かった。全身現病歴では103名であり.循環系の疾患, 内分泌・栄養および代謝疾患並びに免疫障害, 神経および感覚器の疾患が多かった。
5.顎堤形態としての上下顎顎堤吸収の進行程度は, 上顎に比較し下顎で吸収強の占める割合が多く, 総義歯経験ありで経験無しに比較して吸収強の占ある割合が多かった。
6.総義歯経験年数と顎堤形態としての上下顎顎堤吸収の進行程度は, 上顎前歯相当部および下顎前・臼歯相当部で経験が長くなると吸収強の占める割合が多くなった。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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