老年歯科医学
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高齢者デイケアセンターにおける歯科健診の検討
冨士田 益久木原 秀文藤本 嘉治吉田 裕山田 尚米虫 和子
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1997 年 12 巻 1 号 p. 55-60

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抄録

大阪市東淀川区歯科医師会では, 高齢者歯科保健に役立てる目的で歯科健診を実施し, 口腔内状況を検討した。対象は, 東淀川区内にある6施設の老人ホームでデイケアサービスを利用する高齢者で, 1996年10月~11月に身体状態と口腔内状態を調べ現状を把握した。受診者数は総計124名で, その内訳は男性45名 (36.3%), 女性79名 (63.7%) であり, 平均年齢は75.75±8.19歳であった。合併症では糖尿病 (19.4%), 脳血管疾患 (15.3%), 心臓病 (13.7%), 高血圧 (12.1%) が多く, これらで全体の約60.5%を占めた。口腔清掃については, 歯ミガキ指導を受けたことがある者は21.3%であった。歯の治療に対して「恐い・痛い」と思っている者は12名 (12.9%) あり, 定期的に歯科医院で受診する者は「時々」を含あると17名 (13.7%) であった。口腔内状態は, 軟組織に疾病ありが32名 (25.8%), 歯垢あり74名 (59.7%), 歯石あり71名 (57.3%) と良好ではなかった。歯の状態は, 1人当たりの平均現在歯数が10.5±3.2本で, 年代別で差が認あられたが, 性差はなかった。う蝕罹患者数は, 59名 (47.6%) で, 総現在歯数に占めるう蝕罹患率は18.7%となり, 1993年度に実施した寝たきり高齢者の口腔診査結果と比べて低かった。無歯顎者は29名 (23.4%) であった。義歯の保有者は80名 (保有率64.5%) で, そのうち義歯不適合は16名 (20.4%) にみられた。
これらの結果, 45.2%に欠損補綴処置が, また48.4%に歯周病の処置が, さらに66.9%に口腔清掃法の改善がそれぞれ必要と認めた。今後, 高齢者にQOLの向上と高齢者歯科保健を推進していく上で, この健診結果を高齢者歯科診療に活かしたいと考える。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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