老年歯科医学
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介護の必要な高齢者の口腔内状態と義歯使用状況
生活環境および痴呆の有無による影響
池邉 一典難波 秀和谷岡 望小野 高裕野首 孝祠
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1997 年 12 巻 2 号 p. 100-106

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抄録

本研究では, 要介護高齢者の生活環境, すなわち自宅または老人福祉施設での生活, および痴呆の有無が, 口腔内の状態や, 義歯使用状況に及ぼす影響について検討を行った。
調査対象者は, 特別養護老人ホームで常時生活を営んでいる入所者80名と, 自宅で介護を受け, 週1回同施設を利用しているデイサービス利用者63名の合計143名とした。調査対象者の平均年齢は81.3±8.8歳であり, 痴呆群が全体の64%を占めた。
これらの要介護高齢者の口腔内状態と義歯使用状況を調査したところ, 以下の結果が得られた。
1. 現在歯数や無歯顎者の割合は, 痴呆群と非痴呆群および在宅者群と施設入所者群の間に著しい差はみられなかった。
2. 義歯が必要と思われる者は全体の93%に相当し, そのうち義歯を使用している者は約半数であった。部分床義歯の使用率は, 上顎で52%, 下顎で38%で各群で著しい差を認めなかった。しかし, 全部床義歯の使用率は上下顎とも57%を示し, 在宅者より入所者の方が, また非痴呆群より痴呆群の方が有意に低い値を示した。
以上のことから, 生活環境や痴呆の有無にかかわらず, 義歯による口腔機能の回復が, 要介護高齢者の健康の維持のための緊急の課題であることが示された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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