老年歯科医学
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老人病院入院患者の口腔内状況とADLの関係
金井 康子溝川 信子
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1997 年 12 巻 2 号 p. 94-99

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抄録

老年者のQ.O.L (生活の質) の維持向上に口腔の担う役割は大きい。今回, 我々は口腔機能の向上を目指す一環として, 老年者の口腔の現状を調査し, その結果とADL (日常生活動作) との関係を報告する。
阪和泉北病院は1, 900余床を有するいわゆる老人病院で歯科受診者の85%が70歳以上である。そのうち当科で義歯作製または床裏装をした65歳以上の入院患者538人を対象とした。調査方法は受診理由・咀嚼能力・残存歯数・ADLの4項目について, まず受診目的とどんな食品が食べられるかもしくは食べているかを問診したのち, 固定性の残存機能歯数を調べ, 厚生省の寝たきり老人判定基準により判定したADLについて比較検討を行った。その結果
1) 受診理由は義歯不適合232人 (43.1%) が圧倒的に多く, 次いで義歯初作製101人 (18.8%) 紛失94人 (17.5%) などであった。
2) 咀嚼能力では流動食, らっきょう, たくあん・おかきを食べている者の合計は98人 (18.3%) と少ないのに対し, お粥138人 (25.7%) ご飯157人 (29.2%) 蒲鉾145人 (27.0%) とその合計は81.7%を占めておりこれらの食品を食べられる者が多かった。
3) 残存歯数が10歯未満の者は442人 (82.2%) と大部分を占め, 10-19歯の者は79人 (14.6%) 20歯以上はわずか17人 (3.2%) であった。また義歯使用者は310人 (57.6%) であった。
4) ADLは「屋内でのみ自立」群2-11人 (39.2%) 「準寝たきり」群176人 (32.7%) 「寝たきり」群151人 (28.1%) であった。
5) ADLと咀嚼能力をみるとADLが高いほど咀嚼能力が高かった。
6) 残存歯数とADLでは残存歯数が多いほどADLは高く, 残存歯数が少なくても義歯で補うことによりADLは高くなることがわかった。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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