老年歯科医学
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抗真菌剤 (miconazole) の投与により黒毛舌の発症がみられた1症例
村松 慶一鈴木 章稲葉 繁
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1997 年 12 巻 2 号 p. 89-93

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抄録

黒毛舌 (black hairy tongue) は, 戦後抗生剤の普及と共に増加し, 決して稀な疾患ではなくなってきた。本疾患患者においてはしばしばCandidaが分離されるため抗真菌剤の投与が治療法の一つとされている。
今回我々は, 口腔カンジダ症患者に対し, 抗真菌剤を投与したところ, 黒毛舌の発症が見られた症例を経験したので報告する。
〈症例〉67歳男性。家族歴・既往歴に特記事項なし。口腔内所見: 上下総義歯。初診時舌背には白苔が, 口蓋粘膜義歯床後縁相当部には点状発赤が見られた。主訴: 口腔内のねばねば感, 口唇の乾燥感, 口臭。
〈経過〉精査の結果, 口腔カンジダ症と診断, 経口用miconazoleゲルを処方した。処方1週間後より舌背に黒い着色が見られ味覚閾値の低下を訴えたが, 自覚症状の著明な改善のため投与を延長した。投与開始2週間後には, 自覚症状・他覚所見ともほぼ消失した。しかし, 舌の黒い着色部位が増加し, 味覚障害も著明となった。薬剤投与を中止したところ, 舌の変化および味覚障害は投与中止1週間で消失した。しかし, 2ヵ月後に同様の主訴にて再来院した。Nystatinによる含嗽を試みたが, 症状にほとんど変化はなく患者の希望もあり, 再度miconazoleゲル経口用を処方した。一週間後には, 舌の黒い着色および味覚障害が再発していた。自覚症状はほぼ消失していたため, miconazole投与を中止した。舌の変化及び味覚障害は投与中止後8日で消失した。

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