老年歯科医学
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高齢者に対する入院下歯科治療について
小野 智史小畑 真今渡 隆成川並 真慈臼井 康裕戸倉 聡川田 達
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1999 年 14 巻 2 号 p. 118-125

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抄録
平成5年3月から平成10年12月までの5年10ヵ月間の日之出歯科真駒内診療所における65歳以上の高齢者入院症例についての臨床統計をもとに, 当院における高齢者に対する入院下歯科治療の実態と動向を把握し, さらに, 入院下歯科治療, 有病高齢者に対する口腔管理上の問題点について考察した。
(1) 65歳以上の高齢者入院症例は587例で全入院症例の36.2%を占めた。
(2) 有病者率は92.2%であり, 有病者症例の75%が複数の疾患を有していた。
(3) 治療内容は保存治療, 抜歯, 義歯を含めた包括的治療が最も多く, 管理方法はモニタリングが最も多かった。
(4) 99例が1年以内に再入院となった症例であり, そのうち18例が再治療の目的で再入院となった症例であった。
(5) 高齢者に対する入院下歯科治療は保険制度上の問題点などがあるが, 長所として, 訪問歯科診療に比べより安全に治療をすすめれる点, 速やかな咀嚼機能の回復が得られる点などがある。
(6) 有病高齢者の口腔管理においては治療計画を立てる上で基礎疾患の種類程度, ADL, 治療終了後の口腔衛生管理なども併せて考慮する必要がある。さらに, 患者本人はもとより周囲の介護者に治療後の継続的な口腔衛生管理の重要性について理解してもらうことが重要である。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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