抄録
広島市歯科医師会および周辺4地区の歯科医師会で構成される広島市歯科医療福祉対策協議会は, 広島市からの委託を受けて平成5年9月より65歳以上の要介護者を対象に在宅寝たきり老人訪問歯科診療事業を開始した。本事業は平成8年度より対象を40歳以上の要介護者に拡大し, 平成11年3月までに1, 284名が受診して順調に推移している。そこで, 我々は平成5年度・6年度に受診した257名を対象に第1回調査 (有効回答205名) を実施し, 平成9年度に受診した278名を対象に第2回調査 (有効回答200名) を実施した。この2回のアンケート調査により以下の結果を得た。
1.広報活動においては保健婦の役割が大きかった。
2.かかりつけ歯科医の割合が増え, 担当医に対する患者や介護者の信頼度も高くなっていると考えられる。
3.1回目の調査では訪問歯科診療後に患者の食事内容や体調の改善がみられたため, 2回目の調査では食事環境について調べ, ベッドや布団の中で食べる人が約4割, 一人で食べる人が約3割いることがわかった。
4.患者の口腔ケアに対する自立度は低く, 歯科衛生士の職務に対する理解度も低かった。
5.高次医療機関との連携強化やセンター方式への移行などの問題点が明らかとなった。また, 少数とはいえ訪問診療に不満を訴える患者や介護者もあり, 今後の検討を要すると考える。