老年歯科医学
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総義歯調製に関する調査
第4報患者の総義歯に対する認識
祗園白 信仁森谷 良彦山本 昭一土田 桂森谷 良孝谷口 洋平田中 裕介清水 政利
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1999 年 14 巻 2 号 p. 139-147

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抄録
良好なリハビリテーション装置として役割を果たす総義歯を調製するための, 的確な診断と治療計画立案への一資料とすることを目的として, 総義歯調製および総義歯自体などに対する患者の認識について調査を行い, 以下の結論を得た。
1. 総義歯調製に関する診療開始から装着までの来院回数, 上下顎総義歯間での調製の困難さ, 装着後に要する調整のための来院回数では, 誤った認識を持っている患者が多かった。しかし, 義歯装着後の疹痛の発現および上下顎総義歯間での調製の困難さでは, 概して正しい認識を持っていた。
2. 総義歯自体に関する総義歯装着が発音機能に及ぼす影響, 食事中の総義歯の動揺・移動および総義歯非装着が日常生活に及ぼす影響では, 概して正しい認識を持っていたが, 総義歯の使用可能年数においては誤った認識を持っていた。また, 総義歯を人工臓器と思わない患者が, 約1/5存在していた。
3. 咬合力の総義歯装着に伴う減弱にっいてはその減弱を小と認識している患者が多く, 総義歯についての知識普及を社会が行っていないと考える患者が, 無歯顎患者で約3/4を占めていた。さらに, 総義歯装着によって果たされるべき機能回復度については, 約1/3の患者があきらめの気持ちを持っていた。
本研究で患者の総義歯補綴診療および総義歯などに対する認識と理解は, 低い現状にあることが判明した。歯科界としては, 歯科医療に対し社会の理解を求める活動が必要であり, このことが患者と歯科医師の両者で満足度の高い総義歯調製に繋がる。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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