老年歯科医学
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当院における高齢入院患者に見られた合併症について
川並 真慈小畑 真今渡 隆成樋浦 善威小野 智史臼井 康裕戸倉 聡川田 達
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2000 年 15 巻 1 号 p. 40-45

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抄録
当院では入院下歯科治療を行っており, 今回65歳以上の高齢入院患者587例を対象に合併症を調査・検討し, 入院下歯科治療の問題点について考察した。合併症の発生率は36.1% (212例) で, 合併症の内訳は循環器系合併症が128例で不整脈と異常な血圧上昇がその多くを占め, 次いで呼吸器系合併症が33例であった。そのほか胸痛・胸苦が20例, 発熱および悪心・嘔吐がそれぞれ18例, 頭痛が13例などが見られ, これらの症状から血圧の異常や虚血性心疾患, 不整脈, 急性気道感染やそれに伴う呼吸機能低下などが判明した症例が見られた。また, 転倒が11例, さらに環境の変化や精神的不安などが原因と思われる不穏や興奮が3例などが見られた。当院入院後に他科を受診した症例は23例で, すでに診断や治療を受けていてもコントロールが不良な場合や当院で新たに疾患が判明した場合などが受診理由であった。また当院入院途中で全身状態の悪化などで転院となった症例は14例見られ, 呼吸, 循環機能の低下による場合が多かった。高齢入院患者の注意点として,(1) 循環器系及び呼吸器系の合併症が多く, これらに特に注意する必要がある,(2) 胸痛や胸苦, 発熱, 悪心・嘔吐, 頭痛などの症状と全身疾患の関連性に注意する,(3) 術前評価では予測しえない合併症があり, 全身状態の再評価や他科受診などが必要なことがある,(4) 入院管理に伴う転倒や不穏・興奮などの合併症に配慮する, などが考えられた。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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