抄録
ポリメチルメタクリレート樹脂 (PMMA) の義歯を大気中に保管すると乾燥して収縮するために, 水中での保管が必要である。しかしながら, 大気中に保管した場合の変形や, 保管後の吸水による変形の回復については明確ではない。また, ポリカーボネート樹脂 (PC) やポリスルホン樹脂 (PSF) では, その性質から大気中での保管や煮沸消毒が可能とも考えられる。そこで, 本研究ではPMMA, PCおよびPSFの大気中での保管とその後の水中の浸漬および煮沸による変形について検討した。
PMMAの試料はマイクロ波重合用レジンでPCおよびPSFの試料はプリフォーム圧縮成形用の材料でそれぞれ製作した。計測点を刻入した試料および防水型のひずみゲージを接着した試料を24時間恒湿器内に保管後, 最大42日間37℃ 温水中に浸漬した。そして, この間の大きさおよび重量の変化, さらに, ひずみ挙動を計測した。また, 同様の方法で煮沸時および再度の煮沸時についても計測した。
PMMAは大気中に保管すると人きく収縮した。その後, 水中浸漬すると, 収縮量は1日後には大きく減少したが, 42日後でも完全には無くならなかった。PCおよびPSFは大気中に保管してもPMMAほどには変形しなかった。PMMAは煮沸すると大きく変形し, 煮沸が不可能であることが確認された。PCとPSFは煮沸によって変形しなかった。