抄録
介護力強化型病院において, ケアカンファレンスへ向けての口腔診査を行った患者のうち, 70歳以上の無歯顎患者475人について, 義歯使用の有無による摂取食事の形状及び栄養状態とADLの関係について年代別に調査・検討した。
1) 全対象者の義歯使用率は49.5%で, 年代別にみると70代・62.3%, 80代・43.2%, 90代・50.0%と加齢とともに低くなる傾向を示し, 70代と80代では有意の差を認めた。
2) 加齢とともに常食者の減少, 義歯使用率の低下がみられ, それに伴い栄養状態も不良となることが示唆された。
3) 義歯使用者のADLは非使用者に比して全項目で高く, 加齢による低下も少なかった。「意志表示」, 「話の理解」及び「衣服の着脱」における自立度は, 各年代で義歯使用者が非使用者に比して有意差をもって高かった。
4) 良好な栄養状態の維持には食事の内容が重要だが, それを可能にするには義歯が大きな役割を果たしているものと考えられる。したがって, 義歯の使用を可能にするようなリハビリ等によるADLの向上, 義歯管理の介助が必要であると考える。