抄録
近年, 高齢化が進み通院で医療サービスを受けられない患者が増加してきている。また, 末期癌患者においても, 通院ができず長期入院を余儀なくされている患者も少なくない。我々は, 少しでも入院期間を短縮できるように末期の口腔癌患者に対して, 平成8年より訪問診療を行っている。今回, 訪問診療した5症例について検討した。
初診時の平均年齢は, 78.4歳であり, 扁平上皮癌4例, 腺様嚢胞癌1例であった。5症例とも家族, もしくは本人の強い希望により訪問診療を行うことを決定した。5例中3例がすでに死亡, 2例は訪問診療を継続して行っている。死亡例について検討すると, 2例が在宅死, 残り1例も入院から死亡まで3日間と短期間であった。初診から死亡までの平均日数は236日で, このうち化学療法や誤嚥性肺炎の治療で入院した平均入院日数は72日であった。訪問診療を行った期間は133日 (うち実訪問日数21日) で, 残りは通院での診療であった。
口腔癌は, 出血, 悪臭やボディイメージの障害など在宅管理する上で, 他組織の癌に比べると様々な問題があるにもかかわらず多くの家族 (本人も含め) が訪問診療を希望していることが分かった。これにより, 患者本人や家族の要望にこたえられるように, 訪問診療や入院など多様な医療サービスの手段を持つことが大切と思われた。