抄録
在宅寝たきり高齢者への訪問歯科診療に関しては, 対象となる患者が多くの全身的な疾病を併せ持ち, しかも生活反応も低下していることから, 全身状態をいかにして考慮し, またどの範囲までの治療を行うべきかについての判断が重要となる。しかし, 在宅寝たきり高齢者への歯科診療に際し特別な訓練や知識の教授を受けたことや, 経験の少ない訪問診療スタッフに早急に十分な活躍と成果を期待するのは不可能である。
そこで本研究は, その対策として訪問歯科診療を行っている地域歯科医師会などと大学病院など高次医療機関とが, チームにて協力し診療にあたるためのシステムの開発と構築およびその円滑な運用などの基本的なシステムづくりを目的としている。システムの開発は, インターネットを活用し, そのホームページ上にて情報のやりとりを行う。さらに効率的医療と事故の防止のためチャートの作成を行った。このシステムとチャートを, 日本大学歯科病院に来院した全身疾患を有する患者に試験運用し, その有用性の検討を行った。その結果, 本システムが診療を行った歯科医師に, またアドバイスを行ったスタッフにも利便性があり, 安全でストレスのない診療を行うのに有効であることが明らかとなった。さらに, 円滑なシステムの運用には, 両者の間で調整役を務めるコーディネーターの存在が重要であり, その育成の必要性が認められた。