本研究では, 硬さの異なるバリウム含有ゼリー (Ba-Jelly) を作成し, 被験者とした平均年齢27歳の健常者に, 咀嚼・嚥下させた状態をビデオX線透視検査 (VF) およびナソヘキサグラフを応用し咀嚼との関連を含めで評価した。
VFの結果, 食塊は口腔期に存在する時間が長く, 中咽頭への移動が短時間で行われた。その後, 中咽頭から下咽頭へ, 下咽頭から食道への食塊移行が短時間で行われた。また, ゼラチン量が多いほど, 最大速度が低下する傾向を示した。さらに, 中咽頭の移行と下咽頭への移行を比べると, 中咽頭への移行の方が最大速度が大きかった。
ナソヘキサグラフの結果, ゼラチン量が多いほど咀嚼回数が増えた。また, 嚥下直前の咬合音と嚥下音の時間を計測したところ, ゼラチン量が多いほど, 時間差が長くなった。
以上のように, Ba-Jellyの物性により, 咀嚼・嚥下に差がみられた。咀嚼・嚥下は, 多くの筋および他の関係組織のすべてがタイミング良く, 協調運動する事によって正常に機能する。しかし, 高齢者は, 食塊を運搬する通路そのものの異常はもちろん, 食塊の運搬動作の異常など, さまざまな原因で咀嚼・嚥下機能の低下がおこる。今後, 本研究に用いたBa-JellyをVFで透視し, ナソヘキサグラフの顎運動, 筋活動, 咬合音, 嚥下音記録によって, 高齢者の咀嚼・嚥下を評価することに努める。
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