老年歯科医学
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高齢者の嚥下直前の食塊水分量に関する研究
若年者との比較検討
小城 明子柳沢 幸江植松 宏
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2005 年 20 巻 1 号 p. 25-33

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抄録
高齢者にとって食べやすい食事を考える上で, 高齢者の実際の食品摂取時の唾液分泌を知ることは重要であると考え, 若年者との違いを調査した。また, 口腔乾燥への配慮が必要と考えられる高齢者をスクリーニングする際に, 指標となりうる因子を見出すために, 義歯使用状況や服薬状況との関係についても検討した。
20歳代の若年者33名と70歳以上の地域高齢者30名を対象に, 物性の異なる9食品 (乾あんず, 食パン, ごぼう, 鶏肉, かまぼこ, マッシュルーム, あられ, ほうれん草, ぶり) を一口量摂取させ, 嚥下直前の食塊水分量を分析し, 1分当たりに換算した唾液分泌量を算出した。
一部の試料において, 高齢者群の唾液分泌量が若年者群に比べて少なかったが, 食塊水分量に差違は認められなかった。口腔内保持時間の延長により, 食塊形成に十分な唾液量が得られていることが明らかとなった。なお, それらの試料の物性に共通点はみられなかったが, 味は類似しており (比較的強い塩味), 唾液分泌は機械的刺激よりも味覚刺激に影響を受けていることが考えられた。
義歯使用状況による唾液分泌量への影響は見られなかったが, 服薬種数は唾液分泌量の低下と関連している可能性が示唆された。服薬種数が多い高齢者に対しては, 口腔乾燥への直接的な対処および食事への配慮が必要であることが明らかとなった。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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