抄録
高齢者の口臭と口腔内のにおい発生源となる唾液, 使用中の義歯, 舌苔のにおいを比較し, 相互のにおいの関係を明らかにすることを目的とした。我々の勤務する歯学部付属病院の外来受診患者を対象とした。対象患者の口臭, 唾液, 舌苔および義歯を採取し, 各々の揮発ガスをサンプリングバッグに集めた。サンプルガスは電子嗅覚装置 (におい識別装置FF-1, 島津製作所) を用いて測定した。においのデータ解析には主成分分析を用いた。口臭と口腔内のにおい発生源 (唾液, 舌苔, 使用中の義歯) の比較には1元配置の分散分析を用いた。多重比較にはScheffeテストを行った。第一主成分で口臭と唾液, 口臭と義歯, 口臭と舌苔のにおいには有意な差が認められた (p<0.001) 。唾液と舌苔 (p=0.554), 唾液と義歯 (p=0.526), 舌苔と義歯 (p=0.074) 間のにおいには有意な差を認めなかった。口臭, 唾液, 舌苔, 義歯, それぞれに対する平均値の差の比較では口臭に一番近いのは義歯, 次いで唾液, 最後に舌苔となっていた。本研究では高齢者においては舌苔のにおいはむしろ唾液のにおいと類似した傾向があることが明らかになった。高齢者の口臭のにおい発生源としては義歯が関連が深いことが明らかになった。
