抄録
口腔と全身の健康状態との関連性を調べるために, 歯の残存状況と血管壁硬度との関係についてレトロスペクテイブに検討した。対象は口腔外科手術が予定され, 術前にデジタルオルソパントモ写真撮影, 臨床検査を行った患者140例 (平均年齢61.3±9.0歳, 男性: 女性=83: 57) とした。歯の残存状況の指標としては, オルソパントモ写真上で確認された残存歯数, および歯槽骨像からの歯冠および歯根の比率1以上の歯数の残存歯数に対する割合を調べた。血管壁硬度の指標としては, baPWV (上腕動脈一足首動脈脈波伝播速度) ・CAVI (心臓足首血管指数) を用いた。
これらの関係について検討した結果,
1) 残存歯数とbaPWV値およびCAVI値との間には有意な負の相関を示した。残存歯数が減少するほどbaPWV値 (r=-0.29, P=0.0003), およびCAVI値 (r=-0.33, P<0.0001) が高値を示した。
2) 残存歯数に対する歯冠一歯根比1以上の歯数の割合とbaPWV値, CAVI値との間には有意な正の相関がみられた。吸収の割合が増加するほどbaPWV値 (r=0.22, P=0.0106) およびCAVI値 (r=0.31, P=0.0002) が高値を示した。
したがって, 残存歯数や歯槽骨の吸収状態と, baPWV, CAVIとの間には相関がみられ, 歯の残存状況の悪化と血管壁硬度の上昇には有意な関係がある可能性が示唆された。