老年歯科医学
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ブラッシングによる脳賦活
fMRIによる研究成人における基礎的解析
水野 潤造森田 十誉子山崎 洋治渋谷 耕司久保 金弥丹羽 政美木村 幸司山田 健太朗小城 明子
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2008 年 23 巻 3 号 p. 330-337

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抄録

高齢者における口腔ケアの中で, 器質的ケアを構成するブラッシングと認知機能との関係を調べるために, まず, 健康な成人を対象とし神経科学的に検討した結果, 高齢者の基礎的指標となる知見が得られたため, ここに第1報として報告する。実験対象は, 顎・口腔に異常を認めない右利きの成人男子16名 (24~60歳, 平均43.7歳) とした。方法は, 脳の微細構造と活動状態を外部から非侵襲的に計測できる磁気共鳴機能画像 (fMRI) を用い, ブラッシングによって脳賦活が惹起される脳部位を同定した。
その結果, ブラッシングにより感覚運動野, 補足運動野, 前頭前野, 島皮質, および帯状回が有意に賦活された。この脳賦活パターンは用いた歯ブラシの種類に特異性がなく, 全被験者において認められた。また, 賦活状態を左脳と右脳で比較したとき, 前頭前野と補足運動野では右脳優位性が認められたが, 他の部位では左右差はみられなかった。さらに, 実験後のインタビューでブラッシングにより “爽快感を得た” と回答した被験者のみに扁桃体の賦活が認められた。これらの結果により, ブラッシング刺激は高次脳の感覚運動系だけでなく, 認知, 記憶, 感情の発現に重要な前頭前野の神経活動を高めることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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