抄録
横浜市における寝たきり老人等訪問歯科診療事業は, 昭和63年10月より開始された。
市内16区を3医療圏に分け, 北・西・南の3ブロック制で横浜市歯科医師会の横浜市歯科保健医療センター部門が在宅の寝たきり老人等の歯科診療に当っている。
原則として週1回, 各診療班は契約したタクシーにて, 歯科医師1名と歯科衛生士1名のチーム編成 (初診時は保健所保健婦が必ず同行) で, 概ね1日4件の診療を行っている。
現在, 登録されている担当医は各地区より38名, 協力態勢にある鶴見大学歯学部口腔外科より2名, 会センター担当理事2名の計42名である。
実施してから2年余, この2年間の患者数は実数329名, 延数1391名で, これは実施当初予測された数を大きく上廻り, 寝たきり老人等の歯科診療の重要性を強く認識させられた。
事業は順調に進み, ブロック間に差はあるが, 申込患者は後を断たない。外科処置等観血治療も行っているので, 特に慎重を期し, 医師会の協力, 鶴見大学口腔外科の支援等も得, また担当者への研修も度を重ねている。
高齢人口の急速な増加に伴なう寝たきり老人の歯科診療のニードの増嵩に対応するため, 行政と一体になって横浜市歯科医師会及びその会員は, 真剣にこの事業に取り組んでいる。